深澤 里奈 official website

ブログ

引き継がれたもの

 私の社中のひとりに、元々江戸千家のお茶を習っていた方がいます。
その方との出会いは、随分前に遡ります。
東日本橋にあるLotus 8 が主催するティーチャーズトレーニングの講師を務めた折
その中にいらしたというのです。恐らく、14年近く前のことだと記憶しています。

その時、いつか私からお茶を学びたいと思ってくれたようでしたが
その後の生活サイクルや、お住まいなどの状況で、お近くの先生のところで
江戸千家のお茶を学んでいたということでした。

ある時、軽井沢の tea journey を訪ねてきてくれた彼女から
その事を伺った時は本当に驚き、そして嬉しく感じました。
それから彼女はほぼ皆勤賞で、関東からテーブル茶を学びに軽井沢までやってきました。
その動きから、私は彼女が経験者であることは当然分かっていました。

その後色々なタイミングが重なり、彼女は私のところへ入門することとなりました。
お近くの先生は、ご年齢のこともあり畳まれることになったのだそうです。
先生は、彼女がお茶を続けられる事をとても喜び、良かったわねと言ってくださったのだそうです。

現在はまだ割り稽古中心ですが
先日、できそうだなと思い、彼女に通しで風炉の平点前の稽古をしました。
最初から最後まで、落ち着きのある品のいいお点前でした。
この時、私はとても不思議な体験をしました。
彼女のすぐ後ろに、お目にかかったことのない先生の姿が見えるようだったのです。
彼女をここまで育てた先生。どんなにか丁寧に大事に教えてきたことでしょう。
それが、お点前を通じて生き生きと私に伝わってきました。
そして、彼女を預かるということに対して、より私を真摯な気持ちにさせてくれました。

こうした体験は初めてのことです。
「たしかに引き継ぎます」
そんな言葉が浮かびました。

なんともいえない、心がポッと温かくなるような、そんなお話でした。