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茶の湯の着物を学ぶ
過日、お弟子さんたち向けに「茶の湯の着物を学ぶ」と題して
我が軽井沢教場にて研究会を開催しました。

午前中は座学がメインです。
茶の湯には、お点前だけでなく様々な知識が必要とされます。
茶の湯そのものが、複数の芸術要素を統合し、
体験として一体化させる場だからです。
それが、「茶の湯は総合芸術」といわれる所以です。
・空間芸術としての茶室・庭
・工芸・美術の枠
・文学・思想の背景
・食と香り
・身体表現・所作
大まかに挙げて上記になりますが、細分化すると限りなくあります。
茶の湯は生涯勉強、死んでも勉強(!)というのも
学び切れないほどある、ということを端的に表現しています。
もともと茶の湯に親しんできた家系であれば
ある程度のことは日常生活の中に溶け込んでいるので自然と身についているかもしれません。
私はたまたま縁あって家元から直接指導していただく「直門」というかたちで
十代からお稽古をはじめましたが、
直門の方々は多くが、「祖母が先生だった・・」や、「道具商として出入りしている」、
あるいは、ご主人がお道具の作家であったりなど、
なにかしら色濃い繋がりがあっていらしています。
そんな中、単純に祖母も直門として稽古していた時期がある、というだけの私にとっては
(祖母は弟子をとっていませんでした)
全てのことが非日常であり何一つ馴染みのあるものがありませんでした。
いつの日も、もちろん今も、知りたいという気持ちにかられ
必死に学んでいる最中です。
私のお弟子さんたちも、和文化が色濃い家庭で過ごしてきたわけではなく
痛いほど状況が分かるので
あくまで私のできる範囲でではありますが
少しでもスムースに、楽しく茶の湯の稽古を積み重ねていけるよう
時々こうした「お点前以外の学びの場」をつくっています。
今回は着物です。しかも、「茶の湯の着物」
え?違うの?と思われるかもしれませんが、そうですね、やはり少し特徴があります。
しかも、流儀によってもそれぞれに特徴があると思います。
江戸千家は、比較的自由な流儀と言われていますので
稽古場では紬を着たりもしますが、他の流儀では絶対に着ないと
聞いたことがあります(それぞれの先生によるでしょう)

講師としてお招きしたのは
私の茶友であり、35年共に江戸千家を学んでいる
江戸千家茶道教授 井上宗穂先生です。
着物スタイリストとしても活動され、ご自身で呉服店を経営されています。
私も、雑誌の仕事をたくさんさせていただいていた頃、
着物関連の仕事の時は、いつも彼女にお願いしていました。
書籍に書かれているような、または一般的によく聞く着物にまつわる知識ではなく、
「生きた茶の湯の着物事情」をお弟子さんたちにご講義いただきたく
お声がけをさせていただきました。
江戸千家のお弟子さんの中でも、彼女に着物の相談をされている方がいらっしゃるので
彼女が着物に関わる仕事をはじめた数十年前から今に至るまでの変遷にも明るいです。
着物の格 真・行・草の話からはじまり、
座学はあっという間に終わりました。
全てを一度に覚えることは難しくても、「あ、なんかあったな」という
フック作りとしては大成功だったと思います。
お昼休憩を挟んでいよいよ実物を見ながらコーディネートを考えていきます。


問屋さんからお借りして、初心者向けの反物をたくさんご持参いただきました。
リーズナブルなものとして、ポリエステルの反物もお願いしておきました。

気になることをどんどん質問していくお弟子さんたち。

綴の帯や、袋帯。
新しい、「1年中締められる帯」というのもあって興味深かったです。

鏡を見ながら、実際に当てていきます。
この時役立つのが、カラー診断の結果です。
私のお弟子さんたちはほとんどがおすすめした先生のコンサルティングを受けているので
あまり迷わずに選んでいけます。
(※カラー診断の詳細は、2025年9月10にポストした、私のインスタグラムをご覧ください)

着物の反物を体にかけ、帯を合わせてみます。
何本か帯を合わせてみて、「着物1枚に帯3本」の意味が腑に落ちます。
午後の実践の時間もあっという間に過ぎ去りました。
最後に質問や感想の時間を設けましたが、
一番嬉しかったのは、「家に眠っている着物を見てみようと思った」という感想が多かったことです。
本当に、まずはそこからだと思います。
寸法の関係で着物はどうしても無理だったとしても、帯は使える可能性が高いですから。
こういったことは、恐らく少し前の時代には
母が娘に教えられたことだったのでしょう。
そして、馴染みの呉服店もあったのでしょうから、相談もしやすかったのだと思います。
しかし、昨今はYouTubeなどSNSで、ありがたくも動画で学ぶ機会に恵まれているものの
特に「茶の湯」となると、その特異性からなかなか難しく、
だったら無難に、と、同じような着物になってしまうことが多いように感じます。
それでも、私が通う江戸千家には素敵な着物姿の先生方がいらっしゃり
憧れの眼差しでいつも見つめています。
女性には様々なライフステージがあって、
やりたくてもなかなかできない、というもどかしさがあったりもしますが、
いつかのために少しずつ準備をして
失敗もしながらそれぞれの個性に合った、素敵な着物の着こなしができるように
最初の一歩を踏み出せたように思います。

長い時間集中して、皆、充実感と、心地よい疲労感・・・

こんなにたくさんお持ちくださった井上先生
ありがとうございました。